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30歳の彼がキューバ革命を成功させた要因の一つには
仲間であろうが罪を犯せば罰し
敵であろうが降伏した人間を無闇に殺すようなことはしない
という天秤のように精密な正義感や
戦いの合間にも勉学に励むような
自他への厳しさといった
彼の人間性がある。
だが、
彼のその後の人生が思うように前に進まなかったのは
その完璧な理想主義が
多くの「完璧ではない人々」を受け入れることを阻んだのではないか
と思っていた。
いや、
実際そうであったのかもしれない。
だけど、
23歳の彼は
私たちと同じように
自分が活きる場所を探し悩んだり
自分の無力さに悔しがったり
愛する人との別れにどうしようもなく空虚になったり
そんな「やわらかい部分」を持っていたという事は
誰もが赤ちゃんの時代があるように
当たり前の事なのかもしれないけれど
ショックを感じさせてくれた。
それは24歳の私が持つ「やわらかい部分」を不安がらなくてもいいという安心感でもあったし
それをどう取り扱うかをそろそろ意識し始めなければならないという寂しさでもある。
ハンセン病の少女シルヴィアは問う。
―・・どうして医者になったの
ゲバラは応える。
−人の役にたちたいんだ
―時間のムダよ
−なぜ
―人生は苦痛でしかない
−確かに辛い・・・、生きるために闘い続けなくちゃならないからね
自分の痛みをさらけ出せる強さがないと
人を救うことなんて
決してできない。
そして
実際的・物理的手段を兼ね備えることを
忘れてはならない。