陰翳礼讃 (中公文庫)


平安時代の女性は「月」のようだったのだと、
彼は言う。


闇夜となれば、白い体を顕にする「月」。


ありふれた白も、闇の中では光源となった。
尊き、白。


闇に溶け込むことへの怖れもなければ、
太陽の光を受けて輝くことへの
驕りも、
恥じらいも、
ない。
太陽があるからこそ輝けることを
まっすぐに認め、太陽とは異なる、
やわらかな光を静かに注ぐ。


満ちて、欠けて、
昇って、降りて。
静かに、息をするように。


すべからくを見つめ、
すべからくを認めよ。