ノルウェイの森(上)ノルウェイの森(下)
初めて読んだ時、「合わない」と感じた。


どうしてだろう。
今から想えば、当時の私は「真っ只中」だったのに。


そうだ。
私は自らのディタッチメントにも
損なわれていることにも
気付いてさえいなかったんだ。


だから「真っ只中」の主人公達に送られているメッセージの意味も
理解出来なかった。


この小説の救いは
主人公の渡辺君だ。
彼はディタッチメントの人だし、損なわれているが、
生き続けるコトに決めたし、それを実行している。


それはキレイごとだけじゃ達成出来ない。
キレイごとだけじゃない自分を許すコトを認めるのが、
「大人」になることなのだと思う。
「大人」になるコトを心からはなかなか喜べないけれど、
それよりも「大人」になってでも
生き続けることが、
よっぽど大切なのだ。


渡辺君は「大人」になって、生きるのだ。


そういえば、その種の死臭は
いつの間にか私から皆遠ざかっていった。
そもそもどれ一つとして私の物ではなかったのだから、
当たり前なのかもしれない。


私もこーやって「大人」になっていく。