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「チェ　２８歳の革命」
(2008)
監督：スティーヴン・ソダーバーグ
主演：ベニチオ・デル・トロ

カトウさん（８２）。

いつものごとく、インドの民族衣装は小さな彼女の体に上品にフィットし、
白髪のショートヘアは彼女の溌剌さを助長して輝いている。

彼女がよく好んでまとう茜色の更紗は
彼女が10年ほど前に独りでインドへ旅した際に手に入れたものだ。

「あの時はまみちゃんにも田中さんにもよぉ怒られたわぁ」
カトウさんは笑う。シワが深くて優しい。

まみこさんは東京に嫁いでいる娘さんで、
田中さんは週２回来てくれるヘルパーさんだ。
カトウさんは皆にだまって単身インドに行ってしまったのだから
周りの人々は生きた心地がしなかったに違いない。

カトウさんは彼女の師である高僧にどうしてものお願いがあってインドに発った。
「次に生まれ変わる時には、必ずインドの修行僧にして欲しい」
輪廻転生を信じる彼女は今世では次の段階に行けないことを悟り、
来世こそより徳を積んで、次のステージへ行くのだという。

カトウさんはこっそり教えてくれた。

「チェ・ゲバラの映画、観にいったんや。
よぉ出来た映画やった。」

観に行かずにはいられなかった。

もちろん、
カトウさんが独りで映画館に行ったことは
まみこさんにも田中さんにも、黙っておくつもりだ。