ミラノ 霧の風景ヴェネツィアの宿 (文春文庫)
薄く金メッキされた小箱をもっていた。
表面に散りばめられた、ダイヤモンドみたいにカットされた小さなガラス達の感触を
確かめるようにしてよく撫でた。
中にはビーズやおはじきを入れていて、
だけど私は上手にそれらを使えなかったから
そっと確かめるばかりだった。
蓋の反対側には小さな鏡が付いていたけれど、
それに自分を映しこんだ思い出はあまりなくて、
小さな鏡ごしでさえ、キラキラ光る私の宝物を愛でることを楽しんでた。


そんな心地で、私はページをめくる。